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満天☆の海-2

針路は西へ2013.07.12 紀伊水道を渡り鳴門海峡へ

記録写真は満天☆の海対応頁へ
航海計画 : 方杭-鳴門海峡-小豆島草壁港:55マイル
(当初は小鳴門海峡を予定していた)
クルージング出発前に鳴門海峡通過に関する情報をWebで調べていたら、潮待ちの本船が列をなしてると書いてるヨットのブログを見つけた。この情報は初耳だったが、順番待ちしてる本船が行ってから通るとなると転流時刻からだいぶ遅れる。鳴門海峡は転流後30分も経過したらかなり速い流れになるので、転流後が向かい潮だったら完全にアウトだ。
この情報が引っかかって鳴門海峡じゃなく小鳴門海峡を通る計画を立てていた。すなわち、一日目は方杭から福良(予備撫養港)に入り情報収集。次の日に小鳴門海峡を通って瀬戸内海に入り小豆島の草壁港まで行く、という二日がかりの計画だった。海保などはヨットは明石海峡を通るようにと勧めてるがこれは最後の手段。

ただ、小鳴門海峡通過に関しても不安はあった。最大の懸念はGPSの精度だ。Donさんの情報、海難審判裁決録、大縮尺海図などで小鳴門海峡の危険個所を徹底的に調べ上げてコースを設定したので、水道内の航路には全く不安はなかったのだが、肝心のGPSに誤差があったら狭い小鳴門海峡では簡単に座礁してしまうだろう。メーカーに問い合わせたら、GPSの誤差は10年前の平均15mから現在は平均7m (DGPSなら5m)に縮小されているとのことだが、衛星の位置などによっては誤差はもっと大きくなるということだった。

また、どのタイミングで撫養の瀬戸に入るかという問題もある。大鳴門(鳴門海峡)はジャスト転流時刻に大鳴門橋を通過すればよいのだが、小鳴門海峡は撫養の瀬戸から北泊の瀬戸まで約4マイルもあるので通り抜けるのに約1時間もかかるのだ。そして小鳴門海峡で潮の流れが最も速いのは海峡出口の北泊の瀬戸付近(※)なので、明日のように転流後逆潮になる場合は遅くとも転流時迄には北泊まりの瀬戸を通過して海峡から出てしまわないとまずい。そうすると撫養の瀬戸には遅くとも転流1時間前に入らなければならないということになる。
(※H2全国版潮汐表の記述⇒流速は北泊浦附近の峡部では鳴門海峡のほぼ0.5倍。その他の地点ではこれよりも弱い。H18Sガイドの記述⇒北泊浦付近で約6.4kn、小鳴門橋付近で大潮平均3.3kn)

小鳴門通過の計画を立てて航海に出たものの、どうするか決めかねていたら安乗でお世話になった泉大津YCのマリオの西井さんから何回か鳴門海峡を通ってるが潮待ちしてる本船など見たことはないという話を聞いた。この西井さんの助言が決め手となって大鳴門通過に挑戦してみようという気になったのだ。

ウェイポイント方杭-鳴門海峡-小豆島草壁港55nm(New Pec data)
N33:56.3384 E135:05.0017 方杭港 距離0.9nm→
N33:56.3566 E135:03.8853方杭一文字北 距離22.8 nm→
N34:10.6096 E134:43.0107方福1 淡路島潮埼沖 距離4.2 nm→
N34:13.4563 E134:39.4850鳴門南口1 距離0.9 nm→
N34:14.3078 E134:38.9896鳴門南口2 大鳴門橋直下 距離0.6 nm→

N34:14.7285 E134:38.6400HN3 大毛島孫崎北 距離1.8 nm→
N34:15.6122 E134:36.8112HN2島田島思埼北 距離10.9 nm→
N34:20.0870 E134:25.0630小豆島北泊 距離8.5 nm→
N34:25.2179 E134:17.0013KUS1福部島沖 距離1.6 nm→
N34:26.6422 E134:16.2249KUS2沖のハナゲ西 距離0.7 nm→
N34:27.3234 E134:16.4628KUS3地のハナゲ北 距離1.8 nm→
N34:28.7170 E134:17.8760KUS4草壁港桟橋前 累計54.7nm

下図赤線矢印が鳴門海峡に設定したコース、図はNewpec海図クリック拡大
針路は西へ2013.07.12 紀伊水道を渡り鳴門海峡へ_b0114415_1133683.jpg


航海シミュレーションat方杭みちしおの湯
距離
方杭港-鳴門南口2=29nm、鳴門南口2-草壁港=26nm 総計55nm
方杭港-1nm-一文字防波堤-22.7nm-方福1-4.7nm-鳴門南口2-26nm-草壁港

時間
0430方杭港出港
0500一文字防波堤出発
0920方福1着(紀伊水道の潮に乗り22.7nmを5.3knで航行すると)
1000鳴門南口2着(鳴門の潮に乗り4.7nmを6.5kn で航行すると)
 (転流までに1時間の余裕)
1109鳴門海峡通過

小鳴門を通るためのシミュレーションもやってみたが、明日の鳴門の転流時刻が1109時なので10時には撫養の瀬戸に入らなければならないので間に合いそうもない。大鳴門なら間に合う可能性があり、更にうまく行けばその日のうちに小豆島まで行けそうだ。

最終決定したスケジュール
0430時 方杭港岸壁離岸作業開始
0500時 一文字防波堤から平均5.5knで航行開始
1040時 この時刻までに鳴門南口2の2nm手前に到着してない場合は、時間に余裕がないので鳴門を渡らず、福良に入港して計画を立て直す。予備撫養港。
1109時 鳴門海峡通過
1600時 小豆島草壁港入港。
平均5knで走れれば1600時着だが、備讃瀬戸から播磨灘の潮は東流となり弱いながらも逆潮なので、草壁が無理そうなら早めに目的地を引田港に変更する。最終判断は小豆島北泊WPで行う。

航海記 : 方杭-鳴門海峡-小豆島草壁港55nm 12時間
2013年7月12日晴れ 0340起床0430離岸0500機帆走開始0936大鳴門橋2nm手前到着
1112鳴門海峡通過1630草壁港桟橋係留完了


最初の航程は紀伊水道を横切って鳴門海峡までの29マイルだ。
0340起床。すぐに出港準備に取り掛かる。岸壁にかけていた梯子を忘れないように回収。
0430離岸。
0500セールを揚げて航行開始。
0700ごろまでは真追っ手で6kn位出ていたが、その後風が上りになり最高でも5knにダウン。
0800ごろには更に1kn以上ダウンして4knを切るようになった。この時間は連れ潮なのでペラに何かが絡まったことは間違いない。非常にまずい。紀伊水道の中なので躊躇したがこんなスピードではとうてい鳴門の転流時に間に合わないので潜水することにした。紀伊水道を走る本船が見えないことを確認してから艇を漂流させておく時間を長くても5分以内にすれば危険はないだろうと判断し、作業手順を確認。大丈夫だ。命綱はスイミングラダーからダブルに取った。
藻がだいぶペラに巻きついていたが2回の息継ぎで切り落とし終えた。スイミングラダーに片手でつかまって体を安定させた状態で手を延ばせばペラに手が届くので、藻を切り落とすだけなら作業は早い。昨年下田沖でやった時に比べれば格段の進歩だ。あの時はスイミングラダーにつかまって作業することを思いつかず泳ぎながらの作業だったし、それにあの時は捨て網を巻き込んでいたのでナイフで切り取るのに手間取った。

藻除去後スピードが5kn台に回復。
霧で陸地は全く見えず。

0830 霧の中に淡路島発見!
0900 方福1WPまで1.6nmだ。方杭一文字からここまでの距離21.1nmを4時間で走った。平均速度5.3knだ。
0916 方福1到着。ほぼシミュレーション通りだ。潮に乗り6kn出ている。あとはゆっくり流して行けばいい。

0920 霧の中に大鳴門橋が見え始めた。瀬戸内海への関門だ。ついにここまでたどり着いたなーと、ちょっと感激!
0936 鳴門海峡南口WPまで2nmの地点に到着。時間調整でゆっくり航行したつもりなのに方福1からここまでの2.7nmを8.1knで走ったことになる。さすがに鳴門海峡に近づくと潮が速い。

転流まで約1時間半の余裕があるので通峡方法を検討。
まず最初に貧弱な馬力のエンジンで鳴門の潮流に逆行して走れることを確認。潮に逆行出来なかったら大鳴門橋に流されてしまう。行っては戻り、行っては戻りを繰り返しながら徐々に大鳴門橋に接近して行った。GPSが表示する速度は対地速度だから潮流に負けて流されていたらすぐにわかるが、真横に見える景色にも注意を払った。万一潮流に負け始めたら横に逃げるつもりでいた。世界三大潮流の鳴門海峡に初挑戦だからおっかなびっくりだ。

気になっていた潮待ち船だが大鳴門橋のどちら側にもいなかった。紀伊水道側の船(順潮なので潮に乗れる)はもちろんのこと瀬戸内海側の船(こちらは逆潮)も潮待ちなどしてない。潮待ちの船が列をなしていたと書いてあったあのブログは一体何だったんだろう?

航行している本船を観察していると、紀伊水道を北上して来た本船のほとんどは飛島にかなり接近して大鳴門橋に向かい、大鳴門橋の中央橋梁標から左側を通って通狭している。あれ~、鳴門海峡は左側通行だったか?と思ったほどだ。
五管の海の情報 鳴門海峡を航行する場合の注意事項 鳴門七則4)に「大鳴門橋の中央灯の右側を、可能な限り橋軸線と直角のコースで航行しよう」と書いてあるが、こんな当たり前のことをなんでわざわざ書いてるんだろうと不思議に思ったのだが、現場に来て納得だ。海図には右側航路にはみ出して危険界線が描かれているので「中央標の右側を、橋軸線と直角のコースで通航しろ」と言われても、危険界線に突っ込みそうで確かにこわい。だから行き会い船さえいなければ左側を通るのだろう。早めに来て学ぶことが出来てよかった。

相当数の漁船が集まって漁をしていたが、大鳴門橋の近くにいて通り抜けるのに邪魔になりそうな漁船はいなかった。福良側で待機していたので、まず飛島側に寄ってから大鳴門橋に向かう予定で転流15分前の1055に走りはじめた。ジブは巻いたけどヨットなので当然メインセールは揚げたままだ。関門海峡ではメンも下せと巡視船に言われるらしいけど。

後から本船が来ているのが見えたので邪魔にならないようにと全速力で橋に向かい転流4分前だったがそのまま大鳴門橋の中央橋梁標識(中央標)向かって突っ込んで行ったのだが、こともあろうにこの本船は橋の下で追いついてそのまま中央標の左側を通って追い越して行った。まさかこんなところでは追い越さないだろうと思っていたのでちょっとあせった(※)。早めに来て本船の通狭方法を観察してなかったら反対航路から追い越されてびっくりしたと思う。オートパイロットを解除して手動で操縦していたので引き波に舵を取られることはなかった。
下の写真は1103時大鳴門橋通過直前のもの。右に中央標、左に左側端標が写ってる。
針路は西へ2013.07.12 紀伊水道を渡り鳴門海峡へ_b0114415_7494551.jpg

下の写真は7月20日観潮船から撮影した橋の南側から見た右側端標とその上の側端灯
針路は西へ2013.07.12 紀伊水道を渡り鳴門海峡へ_b0114415_750276.jpg

側端標というのは橋梁についている航路標識で、左右は水源に向かっての左右であって船の進行方向とは関係ないので注意。
鳴門の水源は瀬戸内海方向なので瀬戸内海に向かって右に右側端標がある。右側通航なので瀬戸内海に向かう時は中央標(夜間は中央灯)と右側端標(夜間は右側端灯)の間を通る。瀬戸内海から出る時は、進行方向左側に右側端標、右側に左側端標、と左右が逆になるので慌てないこと。右側通行なので中央標と左側端標の間を通って瀬戸内海を出ることになる。

1112 播磨灘に入り大鳴門橋が後に遠ざかりつつある。左は四国、右は淡路島だ。ついに瀬戸内海に入ったぞ!





海上衝突予防法
第9条[狭い水道等]
(第1項) 狭い水道又は航路筋をこれに沿って航行する場合は、安全であり、かつ、
実行に適する限り、狭い水道等の右側端に寄って航行しなければなりません。
〔右側端航行〕
この規定は、水域が狭く船舶交通の幅輳する狭い水道等において、右側通航の趣旨を徹底
することにより船舶交通の安全を図っているものです。喫水の浅い小型の船ほど右側に寄る
ことにより、喫水の深い大型船が水道等の中央部を安全に航行することが可能となります。
第13 条[追越し船]
・ 追越し船は、この法律の他の規定にかかわらず、追い越される船舶を確実に追い越し、
かつ、その船舶から十分に遠ざかるまでその船舶の進路を避けなければなりません。
・ 船舶(次図参照)の正横後22 度30 分を超える後方の位置(夜間にあっては、その船
舶のげん灯のいずれをも見ることができない位置)からその船舶を追い越す船舶は、
追越し船と規定されています。
・ 自船が追越し船であるかどうかを確かめることができない場合は、追越し船であると
判断しなければなりません。

下図は五管の海の情報にある「大鳴門橋の灯火及び標識(南方から橋を望む)」 
図にはいろいろ書いてあるが、重要なのは橋梁灯と橋梁標だけなのでこれをしっかり頭に入れておく。
針路は西へ2013.07.12 紀伊水道を渡り鳴門海峡へ_b0114415_15434920.png


鳴門海峡(水路誌抜粋)
概要
鳴門海峡は紀伊水道の主航路から分岐し瀬戸内海中央部に通ずる最短航路で、小型船の重要航路である。海峡幅が狭く、潮流は極めて強く流向は複雑で、更に行会船も多いので、通峡には十分な注意が必要である。特に大型船及びこの海域に不案内の船舶は通航しないほうがよい。

海峡最狭部の門埼《トサキ》(34°14′N 134°39′E、淡路島南西端)と孫埼(34°14′N 134°39′E、大毛島北端)南方至近との間に大鳴門橋がある。また、この海峡は、中瀬の四国側の大鳴門と淡路島側の小鳴門(いずれも通称)に分かれている。一般船舶が通航するのは大鳴門で、小鳴門は小船艇しか通らない。
鳴門海峡西側の島田島及び大毛島と四国との間に北泊《キタドマリ》ノ瀬戸及び撫養《ムヤ》ノ瀬戸があり、瀬戸の南口に撫養港がある。鳴門海峡東側の淡路島に福良港がある。

瀬戸内海を西航しようとする船舶は、紀伊水道南口から備讃瀬戸東口間で鳴門海峡を通航すれば明石海峡を通航するよりも航程で約40M短縮するが、同海峡は狭いうえに潮流が強く最強流速10.6knに達し、海難も多い。大型船やこの地方に不案内な船舶は通航しないほうがよい。

潮汐 海峡を挟む両側海域(播磨灘、紀伊水道)における潮汐の潮時差が約5.2 時間と逆位相に近く、一方が高潮のころ他方はほぼ低潮となる。

潮流 (第6 図(33 ページ)、第7 図(34 ページ)参照)
1 鳴門海峡は、日本で最も潮流の強い海域で、前述の潮汐の逆位相により生じる水位差のため速い流れや渦(鳴門の渦潮)を形成する。最強流速は、大潮平均で9.2kn、年間最大では11kn 近くになる。
2 強潮流の区域は、海峡の下流側に出現する。北流時には淡路島側の門埼と四国側の飛島を結ぶ線、南流時には門埼と四国側の孫埼を結んだ線を過ぎると潮流が急激にその速力を増し、途中で小鳴門からの支流も加わってその勢力はさらに大きくなる。
この強潮流域区域は、幅600m~1km の帯状に、表面が比較的平滑な海面となって現れる。長さは転流の約2 時間後に最大となり、北流時に約3M、南流時にはそれ以上に達することがある。

[Wikipedia]
鳴門海峡は、本州と四国の間にある瀬戸内海と太平洋とを結ぶ海峡の一つで、幅が約1.3km。潮汐により1日に2回、大量の海水が瀬戸内海に流れ込み、また同様に1日に2回瀬戸内海から流れ出す。瀬戸内海と太平洋の水位差は最高で1.5mにも及ぶ。海峡の幅が狭いことに加え、海底の複雑な地形も影響し、潮流は13~15km/hの速度で流れる。大潮の時には20km/hに達することもある。この潮流の速度は日本で一番速く、「世界三大潮流」にも数えられることもある。 

この早い潮流と、海峡両岸に近い穏やかな流れの境目において、渦が発生する。
大潮の際には渦の直径は最大で30mに達するといわれ、渦の大きさは世界でも最大規模といわれる。
by mantenbosisan | 2013-07-29 01:35 | 針路は西へ2013 | Trackback | Comments(0)
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