満天☆の海-2

操船手順書ー5 ファーリングジブの展開と巻き取り時の注意点

最初は知らないためにしょっちゅうトラブってた。トラブルを起こしながら覚えてきたのだが、しかし分かっているなら同じ轍を踏む必要もない。「ジブファーラーの仕組みとトラブル対策」 の中にまとめて書いたことを、抜き出してまとめ直した。

A)ジブ展開時に注意すべきこと
風の強い時に起こりやすいトラブルだが、セールを展開する時に不用意にファーリングラインのシートストッパーを解放してジブシートを引っ張ると、風圧で一気にセールが展開し、ファーリングラインがキンクした状態でドラムに巻き込まれやすい。こうなるとセールを巻き取れなくなりにっちもさっちも行かなくなる。
これを防ぐには、一気にセールが出て行かないようにファーリングラインをウインチに一巻きか二巻きして片方の手で持ち、もう一方の手でジブシートを引いて行く。

B)ジブ展開中に注意すべきこと
ジブを激しくシバーさせないこと。ジブシートをクリートせずにたるませたままの時に、ジブが激しくシバーするとジブシート同士が絡みついてしまうトラブルが起きる。強風時のタッキング時、リーフ時、ファーリング時など要注意。
強風時のタッキング完了後風下側のシートをウインチにかけて巻き込もうとしてうっかり手を滑らせた時などジブが大暴れしてジブシート同士が絡みついてしまう。急いで風下側のシートをタイトに引いてシバーを止めないとシート同士が硬く団子状に絡みついて解くのが大変になる。操作時以外は風上側のジブシートは余分なたるみを取ってクリートしておいた方が良い。

C)ファーリング時に注意すべきこと

1)バックステーを引いてからファーリングする
バックステーが緩んでいるとフォアステイがサギングを起こしており、フォアステイにかぶさってるフォイルもたわんでいる。そんな状態でジブを巻き込んでもきれいに巻きこめないし、何よりフォイルの中のフォアステイを傷めてしまう。バックステイを引いてジブハリがピンと張った状態でファーリングすること。巻き終わったらバックステーを緩めるのを忘れないこと。

2)ジブハリのテンションを抜いてからファーリングする
帆走し終わったらジブのラフにテンションをかける必要はないのだからその時点でジブハリを緩めるくせを付けておく。帆走後もジブハリを引きっぱなしにしておけばラフは伸びきってしまう。ファーリング時はジブハリのテンションを抜いてあることを再確認する。

3)アビームくらいに落としてファーリングする
風が強い時にクローズホールドでジブを巻きこもうとするとジブが暴れて大変だ。ジブシート同士が絡み合って団子状になることもある。強風時はアビームまたはそれ以上に上り角度を落としてやると良い。上り角度を落としてセールが暴れない程度に風を抜きながらファーリングラインを引き込んで行く。

4)ウインチハンドルを使わずに手で引き込む
手で引き込むことによって何かに引っかかってたりするトラブルを発見できる。ウインチハンドルを使って巻き込むとトラブルに気付かずセールを破いてしまったり、ファーラーに深刻なダメージを与えてしまう恐れがある。
だから、風を抜いているにもかかわらず手で引き込めないくらいのロードがかかっている時はまず原因を調べる。ファーリングラインがドラムの中で絡んでいたりするとやっかいだが、たいていはジブシートがウインチか何かに引っかかってるような単純なトラブルだ。それらの障害を取り除いてから再度引き込んでいく。

5)ジブシートにテンションをかけながらファーリングする
風が弱い時や湾内までセーリングで入ってきてファーリングする時は巻き込みが緩くなりがちだ。ジブシートを軽く引っ張りながら(ジブが風をはらんでいるのと同じ状態にして)ファーリングしていけばタイトに巻き込める。



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# by mantenbosisan | 2018-04-11 23:34 | 操船(主にsinglehand) | Comments(0)

ASAHIウインチの分解掃除-2 分解、洗浄、再組立て


先に挙げた資料に書いてあったことだが、
分解洗浄再組立てをうまくやるコツは、取り外した順番にパーツをトレーの上に並べて行き、洗浄もまとめてやらずに一つずつやって元の位置に戻していくことだそうだ。そうすれば組立てる際、間違えなくて済むとのこと。
また、特記事項としては、pawl(爪)へのgrease塗布は厳禁と言う点だ。greaseを塗ると固着してしまうからだそうで、light machine oil、あるいはlight engine oilを使うようにとのことだ。(Ref.toLewmar manual p-18 Greasing, and the West adviser)


用意したもの

ブルーシート ライフラインにかけて部品が飛んで海に落ちるのを防ぐのと、作業場所に敷いて汚れ防止にする。
新聞紙    汚れ防止

段ボール   ウインチを囲み、部品が飛ぶのを防ぐ。

無地の白いバスタオルやタオル ウインチの周りに敷いて汚れ防止と、部品が飛び跳ねるのを防ぐ。
ウェス  多めに用意
極薄ゴム手袋

洗浄用のプラスティックケース(ダイソー) 中に軽油を入れてドラムを洗える大きさ。

ステンレスの大きなトレー(ダイソー)   

薄い小型のマイナスドライバー サークリップを外すのに必要。

歯ブラシ 数本用意して、掃除用や刷毛の代わりにグリース塗布に使う。
刷毛   リューマーのマニュアルには刷毛でグリースを塗るように書いてある

爪楊枝  ギヤの溝の奥の古いグリースを取るのに便利。軽油に浸けて柔らかくすれば爪楊枝で簡単に取れる。

軽油(なければ灯油) グリースの洗浄用。

2ℓの空ペットボトル  廃油処分用。

パーツクリーナー又はCRC556 グリース洗浄用。軽油を使わず全てパーツクリーナーでやる人もいる。
ウインチグリース Harken winch grease 等。
潤滑油  マシーンオイル等


作業準備 
タオルをウインチまわりに巻き段ボールでウインチを囲む。海ポチャを防ぐ為にライフラインにブルーシートをかける。

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分解作業(今回はギヤを外さない)


①サークリップを抜く

サークリップは平らな、らせん状のバネだ。溝にはまってるので簡単には抜けない。リングではなく、らせん状なのでエンドがある。そのエンドに細いマイナスドライバーの先端をひっかけて外向きに押し開いて上に抜く。その時にドライバーから外れて飛ばしやすいのである程度開いたら指で持った方が良い。絶対に飛ばさないように手のひらで上をふさぎながら作業する。取り外したパーツは順番にステンレストレーの上に置く。


②ドラムを抜く

サイドデッキの危ない所ではトッププレートを外さない。pawl(爪)とspring(バネ)が外れて飛ぶ心配があるので、トッププレートを指で押さえたままドラムをそっと上に持ち上げて抜く。
この時、古いグリースが固着してるとローラーベアリングがドラム内壁にくっついて一緒に外れて来るかもしれない。その時にベアリングホルダーの下枠(縁)が外れているとベアリングがバラバラと抜け落ちるので失くさないように注意する。プライマリーウインチ(20型)が左右ともその状態だった。


③トレーの上にドラムを置いてトッププレートを取る。


spring(バネ)を押さえながらpawl(爪)といっしょに外す。ドラムの溝にはめてるだけなので簡単に外れる。外す時にspringをはじいて飛ばしやすいので、手の平でふさぎながら外す。


⑤ドラムと一緒に外れてこなかった場合(ハリヤードウインチ(
16
型)はそうだった)、ローラーベアリングを上に抜き取る。


⑥ベアリングの下に敷いてあるプラスティックワッシャーも上に抜き取る。

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注:上の写真ではパーツの並ぶ順序がバラバラになっている。この程度の数なので間違えようもないが、数が増えたら冒頭に書いた通り取り外した順番通りに並べて、最後まで置いた位置を変えない方が良い。また、工程順に写真を撮っておくと良い。写真を撮ってから外せば、組み立てる順番や、どの向きに装着するか分からなくなった時に確認できる。


洗浄作業


①外した部品を軽油に浸してから古歯ブラシやウェス等で汚れを落とす。順番通りに洗浄して、きちんとトレーの元の位置に並べて行くというのがマニュアルにあるやり方だが、今回はみんな一緒に軽油に浸して順序をバラバラにしてしまった。


ベアリングホルダーは上の枠(縁)は一体成型されてるが下側の枠(縁)は脱着式になっている。20型のプライマリーウインチはステムから抜く時に既に下側の枠(縁)が外れていたので、簡単にベアリングが抜けたが、16型のハリヤードウインチは下枠(縁)がしっかりはまっておりベアリングもそのまま収まっていた。本来は下枠(縁)を外してベアリングを抜くのだと思うが、後で下枠をはめ直すのが面倒なので、下枠(縁)を外さずにベアリングを押し出した。無理な力を加えない方が良いと思うが。

ベアリングやドラムの内側の壁面の汚れはウエスで拭き取る。ベアリングホルダーの枠の内側の汚れも良く落とす事。インターナルギヤの溝の奥は落ちにくいが、軽油を入れたプラスティックケースにドラムを入れて浸けておくと(時間があれば一晩)、爪楊枝で溝の奥のグリースが力も入れずに簡単に落ちるようになる。


②外さなかったギヤにパーツクリーナーを吹きかけて古いグリースを落とす。溶けたグリースでデッキが汚れるのでギヤの下周囲に古タオルを敷いて養生する。デッキが汚れたら拭き取る。

尚、パーツクリーナーはガスが沈殿するのでキャビン内にガスが入らないように注意。キャビンは強制排気出来ないので危険だ。要参照⇒エンジンルームでスプレーすると爆発の危険あり


③洗浄後は溶剤をよく拭き取って完全に乾かしてからグリースアップする。溶剤が残ってるとグリースが溶ける。


グリースアップ


①ギヤ、ベアリングにグリースをごく薄く塗る。リューマーのマニュアルには刷毛で塗るように書いてあるが、今回はギヤには歯ブラシ、ベアリングは極薄ゴム手袋をはめた指で塗布。


Pawl
(爪)とspring(バネ)には潤滑油をさす。Lewmarのマニュアル同様、West marineのマニュアルにもこの個所にグリース塗布は厳禁と書いてある。ラチェットの動きが悪くなったり、ギヤが両方向に回るようになる原因はグリースによるpawl(爪)の固着とのこと。
 

組立作業


①センターステムにプラスティックワッシャーをはめてからベアリングホルダーをはめる。

ホルダーの下枠(縁)が外れてる場合は(下左側の写真)、ホルダーにベアリングを入れてから下枠(縁)をはめるわけだが、下枠がうまくはまらなければ無理にはめなくても特に問題はないようだ。

脱着式の下枠(縁)がはまったままだった場合は(下右側の写真)、わざわざ外さずに下枠(縁)を付けたままでホルダーにベアリングを入れた方が面倒が無くて良い。それくらいの弾力はあるが、うまくベアリングがホルダーに入らなければ無理をしないで、下枠(縁)を外してやる。

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尚、ベアリングには上下がある。上面も下面も同じように見えるが、よく見るとどちらかの面の中央に小さい突起があるので、突起のないツルツルした面が一体成型された枠(縁)の方に、突起がある面が脱着式の枠(縁)の方になるようにしてホルダーにはめる。

ベアリングホルダーの準備が出来たらまずプラスティックワッシャーをステムにはめて、その上にベアリングホルダーをはめる。その際、縁が一体成型された側が上、脱着式の枠(縁)が下になるようにしてはめる。
脱着式の縁がホルダーにきちんとはまらなかった場合は、手であてがってベアリングを落とさないように注意してはめる。ホルダーから下枠(縁)が分離してても特に問題はなさそうだ。
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②ドラムをセンターステムにはめる。

下の写真のような向きでspring(バネ)をpawl(爪)にセットしてドラムにはめ、ドラムをステムにはめる時はpawl(爪)を指で押さえてバネが閉じた状態にしてはめる。下の写真を見たらわかるようにバネが開いた状態では入らない。

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③トッププレートを置いてからサークリップをはめて完了。

サークリップはウインチハンドルの差込口よりも径が小さいので拡げてやらないとはまらない。この時飛ばしやすいのでくれぐれも注意。飛ばしやすいのはpawl(爪)とspring(バネ)、それとサークリップだ。外す時、装着する時いずれも飛ばしやすい。ここまでやって海ポチャでは救いようがない。ASAHIのウインチはもう部品が手に入らないので、部品が壊れたり失くしたりしたらウインチそのものがアウトざんす。

カチカチカチと小気味よい音がして軽快に回転するようになったはずだ。



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# by mantenbosisan | 2018-03-07 13:01 | 装備(改定版) | Comments(0)

ASAHIウインチの分解掃除-1 構造を理解する

Winch model ASAHI 2speed winch 20は生産中止になってる古い国産ウインチで部品も入手困難な難物。マニュアルもなく、動かなくなるまで分解掃除しないので、次やる時にはもうやり方を忘れている。それで今回は自作マニュアルを作成してみた。


参考にした資料

The west adviser Do-it-Yourself: Servicing Your Winches
Lewmar winch service manual


用語

Circlip   サークリップ(スナップリング)

Top plate  トッププレート。ドラムの上に載ってる丸いプレート

Spindle   回転する軸、main spindle 主軸 ウインチハンドルを挿して回転する軸

Stem   回転しない軸、Center stem 主軸 main spindleを挿しこんでいる中央の筒

Drum   ドラム ウインチの外殻

Pawl  歯車の逆回転を防ぐ爪,歯止め

Pawl spring   爪のバネ

Rachet   動作方向を一方に制限するために用いられる機構。一般に、ラチェットは歯車と歯止め(爪)を組み合わせてラックに取り付ける。


外殻の構造

Lewmar one speed EVO sport winchesの構造に似ている。

ウインチの外殻であるドラムの上辺にトッププレートが載り、メインスピンドルのウインチ差込口の下にある溝にはまっているサークリップがトッププレートを押さえている。したがって、サークリップを外せばドラムが外れる。

ASAHI 2speed winch 20外観

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サークリップとトッププレートを外して上から見たところ
 Pawl(爪)とSpring(バネ)がどういう向きで収まってるのか写真に撮って確認しておく。

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ドラムを外したウインチ内部
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ドラム内側(写真は逆さまにして下から覗き込んでいる状態)
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注:写真のベアリングホルダーはベアリングをはめただけの状態でまだ縁(枠)がはまってない。



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# by mantenbosisan | 2018-03-07 00:18 | 装備(改定版) | Comments(0)

ブローチングのメカニズムーヨット

1.ヨットのブローチング

ヨットのブローチングには2種類ある。一つはセールを展開しているヨットならではの強風時に発生するブローチングで、もう一つは動力船と同じく高波時に発生するブローチングだ。

1-1強風時に発生するブローチング

 強風時のブローチングはフリー帆走のスピンランでは頻繁に見かける光景だ。

 

フリーではセールを外側に出すのでCE(セールの効果中心)CLR(艇の側面抵抗中心)から外側に離れてウェザーヘルムが増大する。そして風が強まれば強まるほどウェザーヘルムが増大するのだが、それに加えてヒールすれば(ローリングした場合も)、CE(セールの効果中心)CLR(艇の側面抵抗中心)から外側にずれるので、更に増大する。

 

強風下ではこのように強いウェザーが発生するので、スピン帆走時はもちろんのことスピンなしのブロードリーチでも、強いブローを受けてオーバーヒールさせてしまうと舵も効かなくなり、一気に風上に切り上って、へたをするとそのまま横転する。これが強風時の一般的なブローチングで、当然だがスピン展開時の方が派手にブローチングする。 幸いにしてヨットの復原力は大きいので海難にまで至る例は稀だが、波高の高い時はちょっと厄介なことになる。

ブロードリーチはクオーターリーとも言い、アビームより下(シモ)の帆走の中では最も速く走れるゾーンで、ほとんどアビームと変わらないスピードが出るが、その分、強風時は非常に強いウェザーヘルムで風上に切り上るのを舵で防ぎ切れなくなることもある。ワンランク上のオートパイロットを付けていても強風時にはフリーズ状態になり、激しい力で抑えつけられてティラーから外せなくなることもあるので、強風時のオートパイロットの使用は危険だ。

1-2高波時に発生するブローチング

  ブローチングのメカニズムー小型船に書いたが、ブローチングは船尾後方20°から40°からの斜め追い波時がもっとも発生しやすいとのことだ。風と波が同方向とするならば、それはヨットではラフぎみのランニングからアビームリーチくらいの間の帆走かと思われる。

船尾方向から上記のような斜め追い波に追い越されながら進むヨットは、船尾が波の谷間から頂部に至る過程で前傾姿勢になる。バウが沈みスターンが上ればCLRが前方に移動するので、1-1記載のフリー帆走時のウエザーヘルムに加えて更にまた新たなウェザーヘルムが発生するのだが、追い波時にはヨーイングも発生しており、二つの力が重なってバウは風上に振られる。

というのは、ヨーイングを誘発する波の回転運動の水流は、この波の谷間では波の進行方向とは逆向きに流れるので、右舷斜め後方から追い波(&風)を受けるヨットはバウを右方向に振られ、左舷斜め後方から波(&風)を受けるヨットはバウを左方向に振られる。すなわち、ウェザーヘルムと同じ風上方向に振られるのだ。

波の回転運動の強大な水のエネルギーにウェザーヘルムが重なってバウは一気に切り上りながらヒールする。ヒールすれば更にウェザーは増し、舵を切っても効かず、オーバーヒールしてそのまま横転ということになる。

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水流のエネルギーとウェザーヘルムは共に波が高いほど強くなるし、傾斜もきつくなるので波乗り(サーフィン)状態になって舵効を失いやすい。蛇効を失ってバウがフラフラしてる時に、上述のようなヨーイングが発生すれば横転しやすいことは容易に想像つく。

これが斜め後方からの追い波時のブローチングだ。そこに波が崩れて来て覆いかぶさるとかなり深刻な事態に発展する。

 

 

2.ブローチングを防ぐには

ブローチングが荒天下だけに起こるものなら船を出さないのが最善の予防策だが、そういうわけではないので、ブローチング防止策を、ウェザーヘルム対策、ヨーイング対策、両者に共通する対策の三つに分けて整理してみた。

2-1 ウエザーヘルム、ヨーイング共通対策

  大舵は厳禁、小舵角ですばやく対応

波の下り斜面ではバウを振られやすいが、大舵を取ると水流が乱れて舵が効かなくなるので大舵は禁物だ。周囲の状況を注意深く観察し、船首尾が振られる予兆を感じたら素早く小刻みに対応して針路修正をすればある程度ブローチングは防げるようだ。

セーリングクルーザー虎の巻(舵社)には次のように書いてある。波に追い越され、バウが下がり始めるとバウは風上に振られるので、その直前にベアする方向に舵を切る。少ない舵角で、舵を切るというより当てる感じだ。ヨットがラフし始めてからそれを修正しようとすると、舵角は大きくなってしまう。大きく舵を切ると大きく戻さなければならなくなり、蛇行も大きくなる。船がラフし始める前の早いタイミングで舵を切ることで、少ない舵角で済み、よりまっすぐ、ブローチングしにくく走りぬくことが出来る。

関根照久さんの「クルーザーの乗り方」(舵19922月号から連載)には次のように書いてある。舵角を大きく切り過ぎると水流が乱れて舵が効かなくなります(ストール、失速)。このような時にはヘルムスマンはラダリングするような調子で急激にラダーを動かし、水流をラダー表面から離さないようにします。

 

 

2-2ウェザーヘルム対策

早めのリーフ

後方海面に注意して海が荒れてきたら風上航の時よりも早めにリーフしてウェザーヘルムを減らす。大舵を防ぐ為にも早めのリーフが大事。

ブームバング、バックステイを緩める

ブームバングは緩めてるか?ブローチングしそうになったら直ちにバングを緩めて風を抜き、ウェザーヘルムを減らす必要がある。いくらシートを出してもセールはサイドステーやスプレッダーに当たって(スプレッダーが後にスウェプトバックしている艇は特に)それ以上セールが出ず風を抜けない。そうなると風を逃がすにはバングしかない。また、バックステイが引きっぱなしになってるならすぐにフリーにしよう。バックステイを引けばマストが後傾してウェザーが出る。バックステイは風上帆走時にセールトリムするためのもので、それ以外の時に引くのは百害あって一利なし。

メンを下しジブ1枚にする

ジブ一枚にすればウェザーが減り、追っ手なのでマストへの負担も心配ない。その後の上りのレグがなければジブ一枚にするのは良い方法かもしれない。関根さんの「クルーザーの乗り方」にも次のように書いてある。風下に向かうコースの時には、メインを下してジブだけにするとブームパンチの心配もなく、船を風上に向けないでいつでもセールを下せます(ファーラーなら更に簡単)。その上ブローチングもしにくくなって楽に走れます。この状態ならインボードエンジンを積んでいても回す必要はないでしょう。

スターントリムにする

ブローチングしそうになったら乗員がいる時はなるべくコクピット後方に集めてスターントリムにすると、バウが上ってウェザーヘルムが減り、且つラダーが深く沈んで操船しやすくなる。シングルハンドのクルージング艇は航海用の荷物が増えてバウバースがふさがってたりする。見直そう。

2-3ヨーイング対策

  ヨーイングをピッチングやローリングと同じ括りでとらえてはいけない。これは、ブローチングのメカニズムー小型船に書いた通り、舵では対抗できないような大きなエネルギーを持つ波の水流で引き起こされる現象なのだ。

 

  斜め追い波を避け波に直角に

なぜかというと、ヨーイングを起こす波の回転運動の水流は波に直角なので斜め追い波だとまともに水流を受けるからだ。船尾が振られるようなら、船尾からロープを流したりタイヤを曳航する方法も推奨されている。

尚、追い波に直角にすると、ヨーイング対策にはなるが、真追っ手(デッドラン)になるだろうからローリングが増える欠点が生じ、ワイルドジャイブが心配になる。強風下では、たとえブームプリベンターがあっても、そのロープを引きちぎられたり、ブロックを飛ばされたりする。やはりメンを下してジブ一枚にするのは良い方法かもしれない。その後上りのレグがなければ。

波に合わせて舵を取る

波に追いつかれたら①波の前斜面にスターンを持ち上げられてバウが下がり始める。②波の頂を越えたら波の背面でスターンが下がりバウは上る。

①で、スターンが持ち上げられたらウェザーが強まってバウが波に対して横向きになろうとして、波の回転運動の水流をバウに受け易くなる。したがって、その前に先手を打って船尾が持ち上げられた瞬間リーサイドに舵を取り(あるいは舵を当て)、波に対して直角を維持する。

②波の頂を越えたら波の背面でヨーイングによってリーサイドに振られるので、波頭が艇を追い越した瞬間にウェザーサイドに舵を取る、あるいは舵を当てる。

サーフィンに注意

波は後から来る。追いついて来た波の前面でややラフしながらスピードをつけ、パンピングして勢いをつけながら波に乗る。うまく波に乗ることが出来たら一気に加速して快適なサーフィンを楽しめるのだが、それもほどほどにだ。大波になってきたら波に乗らないように注意しなければならない。波速に同調し舵効を失えばヨーイングの影響を受けやすくなりブローチングだ。小型船では、波速が船速より早い場合、波に乗らないように、追いつかれた波の前面で舵が効く最低速度まで減速して、波をやり過ごすのが追波航行の基本だとしている。また、Practical seamanship illustrated(舵社)にはこう書いてある。サーフィンしながらラダーコントロール出来るくらいのセール面積を選択しなければなりません。サーフィン中のブローチングが一番怖いです。

早めの進路変更

保針性が悪くなる、舵が利かない、急激な横揺れがある、などを察知したら、追い波を受けない方向にコースを変更する。

ところで、池川ヨット工房の海の広場55荒天帆走にも次のような記述があるが、残念ながら理解できない。「風下側に陸地や危険なものがなければ、当然クォーターリーくらいの楽な走りで風下に大きな波をアップダウンしながら下っていく走り方になります。そのときに波の頂上で後ろから波が船を追い抜いていく時がたまにあります。アレッ ラダーが空中に出たのではと思うくらい舵が軽くなります。バラストがあるヨットではそんなことはありませんが、このときが波舵を切る瞬間です。この瞬間の後、波が船より速く走るので船は水に対してバックすることになり、いきなり今までと違う方向に当て舵をしなければ船首を大きく風上側に回されて波に横っ腹をさらすことになり、ブローチングと言う横倒しの状態になります。」


上記下線部分の意味が理解できないのだ。ヨットは波より遅いので常時波に追い越されていくはずだが、それがバックすることになるのなら、追い波で帆走中はずっと波舵(=当て舵)を切り続けなければならなくなるが、実際そんなことはない。

「波の頂上で後ろから波が船を追い抜いていく時がたまにあります」というのもわからないなー。たまにじゃなく波は常時追い越して行くじゃないの?と思うのだが。


3.参考資料 
Practical seamanship illustrated、セーリングクルーザー虎の巻、セールトリム虎の巻、クルーザー運用の実務―以上舵社 クルーザーの乗り方 関根照久 舵19922月号~19935月号(国会図書館デジタルコレクションで読める)
池川ヨット工房海の広場55荒天帆走http://ikegawa-yacht.com/20uminohiroba/umi55.htm



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# by mantenbosisan | 2018-02-22 20:42 | 操船(主にsinglehand) | Comments(0)

ブローチングのメカニズムー小型船

1、海難審判での事例

教訓海難・御前岩の北で転覆(ブローチング回避措置義務違反)で採り上げた海難審判記録では、ブローチング現象を「波速近くまで増速すると、高起した追い波を斜め船尾方から受けて、下り斜面で速力が増すとともに舵が効かなくなる」現象であるとし、回避策として「斜め追い波を受けないように針路を変えるなり,舵効のある最小限の速力に調整するなど」が必要であったとしていた。

ところが該船はそのようなブローチング回避策を取ることなく、波速よりやや遅い8.0ノットの速力で続航し,右舷船尾方約20度から寄せる高起した追い波によってブローチング現象を生じ,波頂付近の下り斜面で急激に右回頭しながら波谷に向かって左舷船首が突っ込み,通過した同波の背面で右舷側に大傾斜し,復原力を喪失して転覆した。というものだった。

天気予報では,風力3、有義波高約1.5mの東寄りの波浪があったということなので、その海域では10-20分おきに1.5倍の高波が、23時間おきには2倍の高波が来ていた事になる。しかし、水深が変化することで生じる波の浅水変形の特徴は、浅くなるにつれて、波長が短く、波速は遅く、波高は大きくなるので、海難現場の御前岩の浅瀬では波高はもっと高くなっていたはずだ。


2.小型船舶のブローチング

小型船舶のブローチングはネットで探すと海保他いろんなところで採り上げられており、それらをまとめるとだいたい次のようになる。

荒天時に斜め後方からの追い波に押されて下り斜面で加速し、波の速度に同調していわゆる波乗り状態になって舵が効かなくなることがある(注:船と波が同じ速度になれば停止しているのと同じ状態なので舵は効かない)。この状態に陥った船は、船尾が波の谷間から頂部に至る過程で、波の回転運動による水流によってヨーイングが誘発されて船首が瞬間的に振られ、横向きになったところで波に叩かれて横転する。これがブローチングという現象で、波の回転運動による水流のエネルギーは舵効をはるかに超える大きな力とのことだ。

われら海族(http://www.wareraumizoku.com/safetyproceeding.html)のサイトでは次のように解説している。
追い波順走中に高速(特に
20knt以上、小型ボートなどでは15knt以下でも注意)航行する場合※、船は波に押され波に同調するかの速度まで加速されることがある。いわゆる波乗り状態であるが、この状態に陥った船は、船尾が波の谷間(低部)から頂部に至るタイミングで、(1)急激なヨーイング運動が誘発されると共に(2)復原力喪失状態が持続する。この結果船は波の進行と直角方向に回頭しつつ大傾斜する。つまり波間に横たわろうとする。ここに横波がデッキに打ち上げる、積み荷が崩れる、自由水影響、突風などの他の傾斜モーメントが重なると船はさらに傾き、ついには耐航性が損なわれる。復原モーメントの限界を超え転覆するということになるのです。小型・高速船で起こりやすい。

※波速を沖合で18-20knくらい、浅瀬で15knくらいと想定しているようだ。



3.ヨーイング現象とは

われら海族のサイト http://www.wareraumizoku.com/safetyproceeding.htmlで以下のようにわかりやすく解説してくれている。

波には回転運動(水の移動)が起こっていて、波頂部ではその伝搬方向に、波底部ではそれとは逆方向に水が移動している。この力は瞬間的に船を回頭させるモーメントとなり、船が針路から逸れる現象を起こす。これをヨーイングという。 1 軽貨のとき、2 波長が船の長さと同程度で影響を受けやすい。


上記解説を読んで次のように理解した。

波の回転運動の水流は、波の谷では波の進行方向とは逆方向に流れ、波の頂では波と同方向ということなので、仮に右斜め後方からの追い波を受けて走ってる船は、下り斜面の波の谷で船首は左斜め前方から水流を受けて右方向に振られ、波頂にある船尾は左方向に押されるので、船は右向きに旋回しようとする。左斜め後方からの追い波ならこの逆に振られる。

この水流の力は、瞬間的に船を回頭させるモーメントとなり、船が針路から逸れる現象を起こす。舵で対抗できるような力ではない。

しかし、この強大なエネルギーを持つ水流は波に直角に流れるので、船の針路を波に対して正確に直角に維持して走ることが出来ればこの影響を免れる。ブローチングを避けるために波に対して直角に走れと言われるのはそのためなのだろう。


4.ブローチングを避ける上での留意事項

いろんな解説書に書いてあるが、大雑把にまとめてみた。

①斜め追い波を避け、追い波に直角に走る

斜め追波は危険なのでさけるべきだ。特に後方2040度からの斜め追い波が危ない。

ブローチングを避けるためには、追い波に対し直角に走るのが良い。

とはいうものの、一般的に追い波では波頂で船体が不安定になり、下り斜面でサーフィン状態(滑走)となり舵効を失って転覆する危険があることは忘れないように。

②早めの進路変更

保針性が悪くなる、舵が利かない、急激な横揺れがある、などのブローチングの兆候を察知したら、直ちに追い波を受けない方向に進路を変更する。

③船速が波速より少し速く、ゆっくりと波を追い越して進む場合

下り斜面を避けて波の上り斜面にはり付くように速度調整して進むのが良い。

④船速が波速より遅く追い波に追い越されて進む場合

波より少し遅い位の速度が追い波の下り斜面で波速に同調しやすいもっとも危険な速度なので、舵効が効く最低速度に落として危険なサーフィン状態となるのを避け、なるべく早く波を通過させ、次の波の上り斜面ではできるだけ長い時間波の斜面につかまるよう増速する。

⑤大舵は厳禁。小舵角で素早い対応が大事

下り斜面はバウを振られやすい。大舵を取ると水流が乱れて舵が効かなくなるので大舵は避ける。船首尾が振られる予兆を感じたら素早く小刻みに対応して針路修正をすればある程度ブローチングは防げる。

⑥その他気が付いたもろもの。

後方海面のワッチ

バウトリムを避け重量物を船尾方向に集めてスターントリムにする。

重心を下げる

荷物の固縛

小さく浅い舵は波浪で舵が水面から出て舵が効かずブローチングをおこしやすいので大きな舵に変える。



5.参考資料

小型船舶安全運航の為の観天望気を入れた気象海象の話 

http://www.shoankyo.or.jp/kisyou/pdf/khn2.pdf

気象の話波の話 

http://www13.plala.or.jp/oosimakisyou/3nami.html

楽しい気象学入門

https://www.padi.co.jp/scuba-diving/columns/weather-abc/5/ 

われら海族

http://www.wareraumizoku.com/safetyproceeding.html

追い波を受けての航行 関東小型船安全協会

http://www.kaiho.mlit.go.jp/09kanku/koutsubu/anzenkakuho/kantousyouan.pdf

ブローチングを回避するために 中部小型船安全協会

http://www.kaiho.mlit.go.jp/09kanku/koutsubu/anzenkakuho/tyubusyouan.pdf

追い波でこわいブローチング 日本海難防止協会 高松海上保安部

http://www.kaiho.mlit.go.jp/06kanku/takamatsu/d_safety_navigation/d_04anzen/d_4_16iroha/d_4_27_o/d_4_27.html

日本財団図書館「銚子地区安全講習会」事業実施記録書・テキスト

https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1997/00428/mokuji.htm

宮崎海上保安部-小型船事故防止のポイント 転覆のメカニズムと対策について

http://www.kaiho.mlit.go.jp/10kanku/miyazaki/uminoanzen/kogatasen-point/date/tenpukuziko/kogatasen-point.htm

海保の記事はほとんど小安協などからの転載だが、宮崎海上保安部の記事は独自の視点でまとめたもののようで力作だ。






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# by mantenbosisan | 2018-02-19 14:45 | 航海情報全般 | Comments(0)