満天☆の海-2

ブローチングのメカニズムーヨット

1.ヨットのブローチング

ヨットのブローチングには2種類ある。一つはセールを展開しているヨットならではの強風時に発生するブローチングで、もう一つは動力船と同じく高波時に発生するブローチングだ。

1-1強風時に発生するブローチング

 強風時のブローチングはフリー帆走のスピンランでは頻繁に見かける光景だ。

 

フリーではセールを外側に出すのでCE(セールの効果中心)CLR(艇の側面抵抗中心)から外側に離れてウェザーヘルムが増大する。そして風が強まれば強まるほどウェザーヘルムが増大するのだが、それに加えてヒールすれば(ローリングした場合も)、CE(セールの効果中心)CLR(艇の側面抵抗中心)から外側にずれるので、更に増大する。

 

強風下ではこのように強いウェザーが発生するので、スピン帆走時はもちろんのことスピンなしのブロードリーチでも、強いブローを受けてオーバーヒールさせてしまうと舵も効かなくなり、一気に風上に切り上って、へたをするとそのまま横転する。これが強風時の一般的なブローチングで、当然だがスピン展開時の方が派手にブローチングする。 幸いにしてヨットの復原力は大きいので海難にまで至る例は稀だが、波高の高い時はちょっと厄介なことになる。

ブロードリーチ(クオーターリーとも言う)は、アビームより下(シモ)の帆走の中では最も速く走れるゾーンで、ほとんどアビームと変わらないスピードが出るが、その分、強風時は非常に強いウェザーヘルムで風上に切り上るのを舵で防ぎ切れなくなることもある。KAKESU-3ではワンランク上のオートパイロット(ST2000)を付けているが、激しい力で抑えつけられてティラーから外せなくなり、フリーズ状態になったまま急激に風上に切り上り、非常に怖い思いをしたことがあった。強風時のオートパイロットの使用は要注意だ。

1-2高波時に発生するブローチング

  ブローチングのメカニズムー小型船に書いたが、ブローチングは船尾後方20°から40°からの斜め追い波時がもっとも発生しやすいとのことだ。風と波が同方向とするならば、それはヨットではブロードリーチくらいかと思われる。

船尾後方20°から40°方向からの斜め追い波に追いつかれたヨットは、船尾が波の谷間から頂部に至る過程で前傾姿勢になる。バウが沈みスターンが上ればCLRが前方に移動するので、1-1記載のフリー帆走時のウエザーヘルムに加えてまた新たなウェザーヘルムが発生する。

そして追い波時にはヨーイングも発生している。ヨーイングを誘発する波の回転運動の水流は、この波の谷間では波の進行方向とは逆向きに流れるので、右舷斜め後方から追い波(&風)を受けるヨットはバウを右方向に振られ、左舷斜め後方から波(&風)を受けるヨットはバウを左方向に振られる。すなわち、波と風が同方向とするならばウェザーヘルムと同じ風上方向に振られるのだ。

波の回転運動の強大な水のエネルギーとウェザーヘルムが重なってバウは一気に切り上りながらヒールする。ヒールすれば更にウェザーは増し、舵を切っても効かず、オーバーヒールしてそのまま横転ということになる。



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水流のエネルギーとウェザーヘルムは共に波が高いほど強くなるし、傾斜もきつくなるので波乗り(サーフィン)状態になって舵効を失いやすい。蛇効を失ってバウがフラフラしてる時に、上述のようなヨーイングが発生すれば横転しやすいことは容易に想像つく。

これが斜め後方からの追い波時のブローチングだ。そこに波が崩れて来て覆いかぶさるとかなり深刻な事態に発展する。

 

 

2.ブローチングを防ぐには

ブローチング防止策を、ウェザーヘルム対策、ヨーイング対策、両者に共通する対策の三つに分けて整理してみた。

2-1 ウエザーヘルム、ヨーイング共通対策

  大舵は厳禁、小舵角ですばやく対応

波の下り斜面ではバウを振られやすいが、大舵を取ると水流が乱れて舵が効かなくなるので大舵は禁物だ。周囲の状況を注意深く観察し、船首尾が振られる予兆を感じたら素早く小刻みに対応して針路修正する。

セーリングクルーザー虎の巻(舵社)には次のように書いてある。波に追い越され、バウが下がり始めるとバウは風上に振られるので、その直前にベアする方向に舵を切る。少ない舵角で、舵を切るというより当てる感じだ。ヨットがラフし始めてからそれを修正しようとすると、舵角は大きくなってしまう。大きく舵を切ると大きく戻さなければならなくなり、蛇行も大きくなる。船がラフし始める前の早いタイミングで舵を切ることで、少ない舵角で済み、よりまっすぐ、ブローチングしにくく走りぬくことが出来る。

関根照久さんの「クルーザーの乗り方」(舵19922月号から連載)には次のように書いてある。舵角を大きく切り過ぎると水流が乱れて舵が効かなくなります(ストール、失速)。このような時にはヘルムスマンはラダリングするような調子で急激にラダーを動かし、水流をラダー表面から離さないようにします。

 

 

2-2ウェザーヘルム対策

早めのリーフ

後方海面に注意して海が荒れてきたら風上航の時よりも早めにリーフしてウェザーヘルムを減らす。大舵を防ぐ為にも早めのリーフが大事。

ブームバング、バックステイを緩める

ブームバングは緩めてるか?ブローチングしそうになったら直ちにバングを緩めて風を抜き、ウェザーヘルムを減らす必要がある。いくらシートを出してもセールはサイドステーやスプレッダーに当たって(スプレッダーが後にスウェプトバックしている艇は特に)それ以上セールが出ず風を抜けない。そうなると風を逃がすにはバングしかない。また、バックステイが引きっぱなしになってるならすぐにフリーにしよう。バックステイを引けばマストが後傾してウェザーが出る。バックステイは風上帆走時にセールトリムするためのもので、それ以外の時に引くのは百害あって一利なし。

メンを下しジブ1枚にする

ジブ一枚にすればウェザーが減り、追っ手なのでマストへの負担も心配ない。その後の上りのレグがなければジブ一枚にするのは良い方法かもしれない。関根さんの「クルーザーの乗り方」にも次のように書いてある。風下に向かうコースの時には、メインを下してジブだけにするとブームパンチの心配もなく、船を風上に向けないでいつでもセールを下せます(ファーラーなら更に簡単)。その上ブローチングもしにくくなって楽に走れます。この状態ならインボードエンジンを積んでいても回す必要はないでしょう。

スターントリムにする

ブローチングしそうになったら乗員がいる時はなるべくコクピット後方に集めてスターントリムにすると、バウが上ってウェザーヘルムが減り、且つラダーが深く沈んで操船しやすくなる。クルージング艇は航海用の荷物をバウバースに詰め込んでたりする。見直そう。

2-3ヨーイング対策

  ヨーイングをピッチングやローリングと同じ括りでとらえてはいけない。これは、ブローチングのメカニズムー小型船に書いた通り、舵では対抗できないほどの大きなエネルギーを持つ波の水流現象なのだ。

 

  斜め追い波を避け波に直角に

なぜかというと、ヨーイングを起こす波の回転運動の水流は波に直角なので斜め追い波(ヨットは波に対して斜めになっている)だと上記ヨーイング図の通りまともに影響を受けるからだ。船尾が振られるようなら、船尾からロープを流したりタイヤを曳航する方法も推奨されている。

尚、追い波に直角にすると、ヨーイング対策にはなるが、真追っ手(デッドラン)になるだろうからローリングが増える欠点が生じ、ワイルドジャイブが心配になる。強風下では、たとえブームプリベンターがあっても、そのロープを引きちぎられたり、ブロックを飛ばされたりする危険がある。やはりメンを下してジブ一枚にする方が良いのかもしれない。但しその後上りのレグがなければ。

波に合わせて舵を取る

波は後ろから来て追い越して行く。波に追いつかれたら①波の前斜面にスターンを持ち上げられてバウが下がり始める。②波頂が通り過ぎたら波の背面でスターンが下がりバウは上る。

①で、スターンが持ち上げられたらウェザーが強まってバウが波に対して横向きになろうとして、波の回転運動(ヨーイング)の水流をバウに受け易くなる。したがって、その前に先手を打ってスターンが持ち上げられた瞬間リーサイドに舵を取り(あるいは舵を当て)、波に対して直角を維持する。

②の波の背面では波の回転運動(ヨーイング)によってリーサイドに振られるので、波頭が艇を追い越した瞬間にウェザーサイドに舵を取る、あるいは舵を当てる。

サーフィンに注意

波は後から来る。追いついて来た波の前面でややラフしながらスピードをつけ、パンピングして勢いをつけながら波に乗る。うまく波に乗ることが出来たら一気に加速して快適なサーフィンを楽しめるのだが、それもほどほどにだ。大波になってきたら逆に波に乗らないように注意しなければならない。波速に同調して舵効を失えばヨーイングの影響を受けやすくなりブローチングだ。小型船では、波速が船速より早い場合、波に乗らないように、追いつかれた波の前面で舵が効く最低速度まで減速して、波をやり過ごすのが追波航行の基本だとしている。

また、
Practical seamanship illustrated
(舵社)にはこう書いてある。サーフィンしながらラダーコントロール出来るくらいのセール面積を選択しなければなりません。サーフィン中のブローチングが一番怖いです。

早めの進路変更

保針性が悪くなる、舵が利かない、急激な横揺れがある、などを察知したら追い波を受けない方向にコースを変更する。

ところで、池川ヨット工房の海の広場55荒天帆走にも次のような記述があるが、残念ながら理解できない。「風下側に陸地や危険なものがなければ、当然クォーターリーくらいの楽な走りで風下に大きな波をアップダウンしながら下っていく走り方になります。そのときに波の頂上で後ろから波が船を追い抜いていく時がたまにあります。アレッ ラダーが空中に出たのではと思うくらい舵が軽くなります。バラストがあるヨットではそんなことはありませんが、このときが波舵を切る瞬間です。この瞬間の後、波が船より速く走るので船は水に対してバックすることになり、いきなり今までと違う方向に当て舵をしなければ船首を大きく風上側に回されて波に横っ腹をさらすことになり、ブローチングと言う横倒しの状態になります。


上記下線部分が理解できないのだ。

波がヨットを追い越したら、すなわち波頭が通り過ぎたらヨットは波の背面にあるので、バウが持ち上がりスターンが下がった状態になるはずで、この時は、バウは風下に落とされると思うのだがなあ…??

どうも池川ヨット工房の言ってることがわからない。


3.参考資料 
Practical seamanship illustrated、セーリングクルーザー虎の巻、セールトリム虎の巻、クルーザー運用の実務―以上舵社 クルーザーの乗り方 関根照久 舵19922月号~19935月号(国会図書館デジタルコレクションで読める)
池川ヨット工房海の広場55荒天帆走http://ikegawa-yacht.com/20uminohiroba/umi55.htm



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by mantenbosisan | 2018-02-22 20:42 | 操船(主にsinglehand)