中古ヨット購入時の注意点
コロナ禍さえなければ、今頃はあっちこっちで新ヨットオーナーが誕生している時期ですが、残念ながらちょっと動きづらい状況ですね。早く収束してほしいと願うばかりですが、この機会に中古ヨットを購入する場合の注意点をまとめてみたいと思います。
艇を購入してそのまま同じマリーナに置いておくケースもあれば、長距離の回航が必要になるケースもありますが、この二つのケースでは状況がかなり異なります。前者の場合は極端な話、艇は浮いてさえいれば後は何年もかけて仕上げて行けるわけですが、後者の場合は購入時点で即航海可の程度の良いヨットである必要があります。そうでない場合は購入してから回航迄の間に航海に耐え得る状態にまで仕上げなければなりません。エンジンについて言えば整備、修理記録が何も無く、オーナーが何もしゃべらないなら、言いたくないという事だから何か大きな欠陥があるか、まともにメンテされてなかったと思った方が無難です。中には廃船処理するにも高額な費用がかかるから、引き取ってもらえるならいくら安くても手放したいと思うオーナーもいるようです。このような正体不明のヨットはいつ何が起こっても不思議はありません。例え試乗時に問題が露見しなかったとしても安心はできません。従って回航が必要な場合は買うべきではありませんし、どうしても気に入って買うなら回航迄にエンジンオーバーホール(30~50万円)をすべきでしょう。
回航距離が仮に180マイルとすると巡航速度5ノットで36時間かかります。オーバーナイトでノンストップで5ノットで走ってギリギリ2日間ですね。回航はエンジンがメインになると思いますが、今まできちんとメンテされていたとしてもそれまで月に数回、低速で一日数時間しか機走してなかったようなヨットを、いきなり36時間、ほぼフル回転(1GM の場合)で走らせ続けるのは古いエンジンにとってそうとう過酷です。いきなりオーバーナイトではなく、何日かに分けてゆっくりと回航すべきです。だいたいペラの状態、船底の汚れ具合によっては巡航5ノットで走れるかどうか分かりません。航行中に藻や網、ロープをペラに巻きつけてしまうことも多いです。
回航は機走主体と言えども、船体や艤装の点検も当然必要ですし、シングルハンドで回航するならシングルハンド用のシステムを組んでおく必要もあります。
途中海が荒れてスタンディングリギンに重負荷がかかって切れたらマストが折れます。スルハルバルブが折れたらドッと海水が入ってきます。ラダーが脱落したらセーリングも機走も不可能です。ハリヤード、シート類が劣化していて切れたらセールを揚げる事さえ出来ませんね。帆走不可能な状態で走っていてエンジンが突然ストップしたら大事故につながります。
これは実際に身近で起こった大事故ですが、購入直後の回航時に整備不十分で突然エンジンがストップ、アンカーラインが切れて艇は石廊崎近くの浅瀬に流されてオンザロックして大破、沈没、乗員は海猿にヘリで救助されました。艇の捜索、沈没船の引き揚げ運搬のためのクレーン付き台船の手配、廃棄処分などでかなり大きな費用が発生しましたが、艇は購入直後のバタバタで保険に未加入だったため全て自腹になったそうです。おまけに連日の海保からの事情聴取と罰金で踏んだり蹴ったりだったそうです。
購入時、回航前チェック項目(思いつくままに列挙)
エンジンを固定するボルトの錆びやエンジン外観、
エンジン始動時の異音、アイドリング及び回転を上げた時のエンジン異音、振動音、排水量、排気色、Vベルト
エンジン防蝕亜鉛交換頻度(怠ってると長い間にエンジン各所が腐食)、アース線、エンジンオイル交換頻度(怠ってると内部各所が磨耗)、海水ポンプからの水漏れ、インペラの劣化、オイルパイプの錆(劣化によるオイル漏れ)、
燃料系統の燃料漏れ、油水分離器、燃料フィルター、エヤーフィルター、燃料タンク(長い間にスラッジ、水がたまってる)
ウオーターロックの亀裂(浸水につながる)、ミキシングエルボーの詰まりや劣化(エンジンに排水が逆流)、スタンチューブの漏水量(多すぎると浸水)、シャフト(ガタつきはないか)、シャフトジンク、ペラ(損傷はないか)
バッテリー(しっかり固定してあるかや経過年数、劣化度もチェック)
ハルの損傷有無、スルハルまわりのオズモシスとバルブの劣化、キールボルト、ビルジ溜まり(海水主体)の量と窓などからの雨漏り等
各種船検安全備品、ジャックライン、ハーネス、ライフライン、スタンションの点検、フェンダー、係留ライン、ボートフック、アンカー、アンカーライン
マスト、スタンディングリギンと各種セーリングギヤー(メイン、ジブ、ジブファーラー、ラダー、ティラー、トッピングリフト、レイジージャック(トッピングの代わりにもなる)、ウィンチ(固着してないか)、ハリヤード及びシート類、ブームブレーキ、バックステー、ジブシートリーダー、メインシートトラベラー、ブームバング、各種ブロック等々の作動テスト)、その他シングルハンド用システム
オートパイロット、GPSプロッター、水深計、航海灯の作動テスト
船検名義変更、航行区域の変更手続き、保険、必要ならBAN加入
航海には燃料・エンジンオイルの予備、インペラ、Vベルト等のエンジン消耗部品の予備を必ず持って行くこと。グランドパッキンも忘れずに。
まだいろいろとあると思いますが、思いつくまま書いてみました。
この記事をもう少し早くみていれば、と後悔しきり。
まさしく、この状態に陥り、無償(正確には10万円)で手に入れた艇を、廃棄処分に40万円掛けて手放しました。
3月、実際に乗ってエンジンの調子も見たのですが、整備状況はしっかり確認せずに譲渡。
この記事が書かれた翌日に回航予定だったのですが、オイル漏れが見つかり、運転確認で冷却水がブロック内に漏れてエンジン掛からず。
今後の事を考えて、エンジン新品に載せ替えしようとすると、マリーナ見積もり200万円、マリーナ外の業者でも100万円の見積もり...諦めて廃棄しました。
唯一、運が良かったのは回航出発前であった事。出発していれば、海難事故でした。
走り始めた汽車に飛び乗ったらもう外の声は聞こえませんし、一方、汽車は乗客の心の葛藤には関係なく時刻表通りに次の駅に向って突き進んで行きます。そして一度乗った汽車から飛び降りて戻るには、飛び乗る勇気の何倍ものエネルギーを消費するので、しょうがなかった面もありますね。
しかし、売主と直談判しましたか?うまくやれば契約キャンセル、悪くても損害額を折半くらいにできないかと。善良な売主なら応じてくれるのではないでしょうか。
仮に交渉不成立であったとしても、40万円の損失はこれからの10年―20年のヨットライフを思えば、2~3万円/年の損失でしかありません。毎年やる上架船底塗装を2年に1度にすれば簡単に回収できますよ。きちんとメンテをしてきた艇かオーバーホール済の艇か、あるいは程度の良い中古エンジンを載せ替えた艇を根気よく探してください。30年越えの28フィート艇の相場は120万円、26フィートなら70万円前後で探せると思いますよ。「ヨットBBS」の「買いたし」欄に投稿するのも一つの方法ではありますね。
遠からずMitaさんの艇が海に浮かぶ日が來ることを祈念いたします。
Y-28は既に所有権移転まで終わっていてからの故障発見だったので、交渉は諦めました。
残念ながら廃船、オーナーは一緒に乗って大丈夫だったのだから、と交渉決裂。
その後、Y-28が置いてあったマリーナ内でマリーナ所有でマリーナがレース等に使っていた整備されたY-30CRSを格安の108万円で入手して、5/25に回航(浦賀から30時間で三河湾、同乗)も終わって、三河湾に浮かんでいます。
Y-28ではなくなってしまいましたが、これからもよろしくお願いします。

