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満天☆の海-2

ディーゼルの白煙黒煙―トラブルではない発煙と発生メカニズム

追補: 同じ燃料の未燃粒子でも白煙になったり灰色煙になったりする理由を記載。


ヨットエンジンの白煙黒煙については今まで何度か整理してまとめようとトライしてきたがどうもうまく行かず、ブログに掲載―削除を繰り返して来たが、三度目の今回は攻め方を変えて、エンジントラブルによる発煙とそうではない発煙に分けてまとめてみた。三度目の正直となるか。

1)白煙黒煙の発生メカニズム

燃料である軽油の主成分は炭素(C)と水素(H)の化合物である炭化水素だ。

燃料が完全燃焼すれば、炭化水素は酸化されてすなわち酸素(O2)と結びついて、気体である二酸化炭素(CO2)と液体である水(H2O)になるが、水(H2O)もいったん気体(水蒸気)になって排出される。燃料に含まれるその他の成分も酸化されてだいたいは気体として排出されるので、完全燃焼すれば燃料の成分はほとんどが気体となって排出される。
しかし、エンジン温度が十分高くなかったり、燃料・給気バランスが崩れたりした時ば完全燃焼できず、燃料の未燃焼分は気体(不完全燃焼ガス)や液体粒子や固体粒子になって排出される。

これらの排気ガスの中で目に見えるのは光の散乱が起こる液体粒子と固体粒子で、気体は小さすぎて光の散乱が起きないため目に見えない。水は気体(水蒸気)として排出されるものの、排気管から出た後空気に冷やされて液体粒子(湯気)になるので目に見える。

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燃料や燃焼室に入り込んだ潤滑油が未燃焼のまま排出されると白煙になり、一部酸化されて排出されると青煙になる。

すなわち、エンジン始動時等エンジン温度が低い時、霧化された燃料や燃焼室に入り込んだ潤滑油が未燃焼のまま排出されると白煙になり(※注1)、低中負荷時等エンジン温度がある程度高くなれば炭化水素が一部酸化(燃焼)して排出されて青煙になる。


燃焼室内で燃料と空気の混合が不均一になり、部分的に空気不足になると、燃料は完全に燃焼せずに炭化された固体粒子(dry soot)を形成し黒煙となる。

すなわち、炭素は燃焼すると酸素と結合して二酸化炭素となるが、船底の汚れ等の高負荷時や急加速時等の負荷変動時には、燃料濃度が濃くなるので炭素が多くなるものの酸素の供給量は変わらない為に、酸素不足になって炭素が燃え残る。この燃え残った炭素が黒いカーボンの塊になって排出されて黒煙になる。


以上は主に日本油化工業 ディーゼルエンジンの発煙の要因および一般財団法人環境優良車普及機構ライブラリ-なるほど!ザ・ワード第1回 粒子状物質(PM)ディーゼルの粒子状物質(PM)を参考にまとめたのだが、財団図書館1級舶用機関整備士指導書2.6 排気ガス色の異常には、更に次のような記述がある。

1)-(3)着火ミス­: 噴射した燃料が着火せず、細かな油滴となって排出されると、排気ガスが灰色になって見え(※注2)、黒い細かな油滴が排気出口から飛散する。
2)-(1)潤滑油は低い温度で燃焼すると白煙になるが、高い温度では青煙になる。

2)-(4)過冷却:寒冷時等エンジン温度が低いとエンジンの主要運動部の熱膨張が不足して大きな隙間で運転されるために一時的にオイル上がりやオイル下がりになる。


※注1/2:
どちらも燃料の未燃粒子だが、粒子の大きさで煙の色が異なると考えられる。即ち、粒子が光の波長と同じ大きさの場合はミー散乱が起きて白煙になり、粒子がそれより大きくなるにしたがって灰色からだんだん黒ずんで来る。


尚、基本的に係留中の無負荷運転では、エンジン温度はそれほど上がらず燃焼環境はけっして良くはないので、長時間運転は避けた方が良いようだ。仁科ヤンマーさんに教えてもらったのだが、係留中での無負荷中速回転では(あるいは機走中の中速運転時でも)、エンジン温度はさほど上がらないのに冷却水循環量は増大するので、エンジンが冷やされて不完全燃焼となり青煙が出るということだ。⇒
エンジン温度が低すぎると青白煙を参照。 


2)トラブルではない排煙事例のまとめ

排気

発生原因

湯気及び、

白煙、青煙

・燃料の燃焼により発生する水が排出されて湯気になる。湯気は白い煙のようにも見えるが、煙のようにいつまでも漂ってることはなく直ぐに消えるので煙との区別はつく。

・低温始動時等エンジン温度が低い時、燃料や潤滑油が未燃焼のまま排出されて白煙になる。

・低中負荷時等エンジン温度が高くなれば、炭化水素が一部酸化して青煙になる。

・係留中の無負荷中速回転時(あるいは機走中の中速運転時でも)、エンジン温度に対して循環水量が多過ぎてエンジンが冷やされるので青煙が出る。

・寒冷時は、過冷却が原因の一時的オイル上がりやオイル下がりになり、青煙が出る。

上記は、いずれもエンジン温度を上げて燃焼環境を良くすれば改善する。湯気も同じだ。燃焼温度が高いと排気ガスも高温になるので水蒸気も冷えにくくなり、目に見える湯気に変わるまでには空気中に分散してしまうので、ほとんど見えなくなる。

黒煙

高負荷時や負荷変動時には燃料・給気バランスが崩れて酸素不足になり、炭素が燃え残ってススとして排出され黒煙が出るが、負荷を取り除けば燃焼環境が良くなって改善する。


参考にした資料

日本油化工業 ディーゼルエンジンの発煙の要因

一般財団法人環境優良車普及機構ライブラリ-なるほど!ザ・ワード第1回 粒子状物質(PM)ディーゼルの粒子状物質(PM) 
財団図書館1級舶用機関整備士指導書2.6 排気ガス色の異常



by mantenbosisan | 2020-05-19 13:13 | エンジン(トラブル) | Trackback | Comments(0)
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