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満天☆の海-2

ディーゼルの白煙黒煙ートラブルによる発煙事例

2020.6.3 発生原因⑥のタイトル変更

  

財団図書館1級舶用機関整備士指導書2.6 排気ガス色の異常(以下資料と呼ぶ)に詳述されているので、ここでは資料から事例を抽出して簡単な表にまとめたが、資料に記載のない発生原因も載せている。


左列に排気の異常、右列にその発生原因を書いているが、当然のことだが、その発生原因が引き起こすトラブルは左列の排気の異常にとどまらない。オーバーホールやエンジン載せ替えが必要になる事もある。

排気の異常

発生原因

湯気の増加

①燃料不良

燃料タンク内の結露水や燃料に混入した水が燃焼室に送られて燃える。

②冷却水量不足

冷却水経路の詰まりや故障でエンジンが過熱。

③冷却水漏れ

シリンダーヘッド、ヘッドガスケット、シリンダーライナーの損傷により冷却水が燃焼室内に漏れて燃える。

白煙、青煙

④噴射タイミングの不良

着火ミスが起きて白煙や灰色煙を出し、運転不調になる。

⑤オイル上がり、オイル下がり

燃焼温度により白煙を出したり青煙を出すが、過冷却による修理を要しない一時的なオイル上がり/オイル下がりもある。

⑥その他のトラブルによるオイルの燃焼

シリンダーヘッドのオイルギャラリーと排気マニホールドの間の壁面に孔があき、オイルが排気経路に漏れて高温の排気で燃焼して青煙を出す等。 

黒煙

⑦吸入抵抗大による酸素不足

エアークリーナが汚れて目詰まりを起こすと吸入抵抗が増大して空気量が減少する。その結果酸素不足による不完全燃焼となり、出力が低下して黒煙を出す。

⑧燃料不適

粘度の違いや、水分その他の含有量が多すぎる粗悪燃料を使用すると不完全燃焼を起こして黒煙を出す。

⑨排気抵抗大

ミキシングエルボーにカーボンが詰まれば排気抵抗が大きくなる。排気不良になるので吸気もうまく行かなくなり燃焼悪化で黒煙を出す。ヨットでは比較的多いトラブルだ。

⑩圧縮漏れ

バルブシートやコンプレッションリングの膠着、シリンダーが磨耗すると圧縮漏れが起こり燃焼不良となる。

⑪燃料噴射不良

噴射タイミングが早過ぎたり遅すぎたりして起こる。

⑫バルブタイミング不良

バルブクリアランス調整不良、吸排気弁の開閉時期の狂い等。

注:潤滑油が高温で燃えると青煙、低温で燃えると白煙が出る。

潤滑油が燃えても黒煙は出ない。


以下補足


燃料不良(発生原因①)

燃料への水混入は、湯気の増加だけでなく、航行中に突然エンジンが停止したり、燃焼反応により硫酸や塩酸などの有害な無機酸が生じエンジン主要部の腐食摩耗を促進する。


燃料に水が混入して燃焼室に入る主因は燃料タンクにあり、ここには給油時に燃料に交じって入った水やゴミ、長い間に溜まった結露水などが溜まっている。水が燃料と一緒にエンジンに送られればエンジンが停止するし、ゴミが燃料と一緒に吸い上げられて途中の燃料パイプに詰まればエンジンに燃料が送られなくなるのでガス欠となってエンジンがストップする。そのような事故は実際に多いので()、油水分離器や燃料フィルターでの水抜きは当然やるとして、燃料タンクも定期的に掃除、水抜きをするべきだ。後悔先に立たず。

尚、ディーゼル用の水抜き剤もあるにはあるが、ディーゼルエンジンに水抜き剤を使うのは良くないようなので使わない方が良い。

※参照:第5管海上保安本部マリンレジャー安全情報


冷却水量不足 (発生原因②)

船底を貫通しているスルハルから入った海水は、海水ポンプでエンジンに送られ、エンジンに鋳込まれたウオータージャケット(海水通路)を流れながらエンジン内各所を冷却した後、サーモスタット(エンジン出口に取付けられて出口を開けたり閉じたりしてエンジン内の循環水の温度調整をしている)を通ってエンジンから出る。ウオータージャケットにはエンジン内の循環水の温度管理をする水温センサーも取り付けられており、65°になったらエンジン計器盤の冷却水警告灯が点灯するとともに警報音がピーッとけたたましく鳴り響き、58°に下がったら鳴り止むように設計されている。尚、1GMの場合ウオータージャケットにはエンジン防蝕亜鉛が1個取り付けられている。


(1)冷却水警告灯が点灯して警報音が鳴り、排水の吐出量が少ないなら考えられる要因は下記だ。

船底側の海水取り入れ口の詰まり(防塵ネットが付いてなければ海中を浮遊しているいろんなものが詰まるし、ネットがあっても貝は付着する。)

海水ホースの詰まり(特に海水ポンプ入出口接続部、エンジン入り口との接続部付近に塩や貝殻が詰まりやすい。)

海水ポンプの故障(インペラ、オイルシール、ウオーターシールの破損。特にインペラが破損しやすい。)

ミキシングエルボーの詰まり

ミキシングエルボーはエンジンの排気マニホールドに接続している太いL型の鋳鉄製パイプのことだが、エンジンから出た排水はここで排気と一緒になって送り出される。比較的塩やカーボンで詰まりやすいところで、ここが詰まって排水が出口を失うと冷却水の循環がストップしてしまうのでエンジンが過熱し排気口からは湯気(白煙)が出るし、排気を阻害されれば当然吸気もうまく行かなくなり不完全燃焼となって黒煙も出る。

ウオータージャケットの塩詰まり

冷却水経路各所をチェックしても塩詰まり個所が見つからないなら、ウオータージャケット(エンジン内部の冷却水通路)が長い間に少しずつ塩詰まりを起こしている可能性がある。ウオータージャケットは開けて見るわけには行かないので、エンジンをかけて洗浄液(ヤンマーで販売している)を循環させながら洗いだす作業になる⇒エンジン内部の洗浄。作業自体はそれほど難しくないので手順さえ分かれば自分でも出来る。尚、ウオータージャケットの中に防蝕亜鉛の欠片が落ちて詰まることもあるので、防蝕亜鉛が小さくなるまで使わずに(半分位迄にとどめて)年1回はきちんと交換するとともに、取り外す際はウオータージャケット内に欠片を取り落さないように慎重にやることだ。


(2)排水が勢いよく出ているなら考えられる原因は下記だ。

・サーモスタットの故障(閉じたままで開かない)や冷却水のエンジン入り口(エンジン側)の詰まり

サーモスタットが壊れて弁が閉じたままになると、エンジン内の冷却水が出るに出られず留まってるため新しい冷却水がエンジン内に入って行けない。エンジン入り口(エンジン側)が詰まっている場合は勿論冷却水はエンジン内に入って行けない。従ってこれらのケースでは海水ポンプから送られた冷却水の大半はエンジン内に入って冷却するという役目を果たすことなく排水口から吐出しているので、エンジンは過熱する。もし、航行中にサーモスタットが故障した場合(冷却水警告灯が点灯して警報音が鳴る)、サーモスタットを交換するまでもなく取り外してしまえば急場はしのげる。次の港に入ってから交換してやればよい。

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冷却水漏れ(発生原因③)

シリンダーヘッド、ヘッドガスケット、シリンダーライナー等が損傷すれば、冷却水が燃焼室内に入る。

資料には「シリンダーヘッドの触火面の亀裂が進展し、水ジャケットまで達すると冷却水が燃焼室へ流入して、始動時水滴が飛散したり運転中に白煙を出す。排気集合管に異常がなければシリンダヘッドを点検し交換修復する。」と書かれているが、シリンダーヘッド触火面というのは、シリンダーヘッドの一番下の面のことで、シリンダー内と排気口を通る燃焼ガスにより運転中は高温となり、周囲から拘束されているので熱膨脹のため内部応力として圧縮を受けるが、エンジンが高温となる高負荷長時間運転と低温になる低負荷運転またはエンジン停止を繰り返していると熱疲労割れを起こす。

ヘッドガスケットというのは、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの間にあるガスケットで、シリンダーの圧縮圧力を外に逃がさずに、冷却水やエンジンオイルがシリンダーに入るのを防ぐ非常に重要な役割を持っているので、ここが損傷するということは、その程度により、冷却水や潤滑油が燃焼室に入りこんだり、燃焼室の圧縮圧力が逃げて十分な燃焼が出来なくなることを示唆している。

シリンダーヘッド、ヘッドガスケット、シリンダーライナーを調べるにはシリンダーヘッドを外すしかないので素人が簡単にやれる作業ではない。

シリンダーヘッド、シリンダーライナーについては2級舶用機関整備士指導書、触火面については溶接学会誌を参照。


オイル上がり/下がり(発生原因⑤)

別掲の通り


その他のトラブルによるオイルの燃焼(発生原因⑥)

オイルの燃焼は燃焼室にオイルが入り込んで燃えるだけではなく、下記のような事例もある。IGMや2GMエンジンでは、シリンダーヘッドのオイルギャラリー(エンジン内部のオイル通路)と排気マニホールド(エンジン内の排気通路)の境界面に孔があいて、オイルギャラリーのオイルが排気マニホールドに漏れ出て排気の高温で燃えて青煙を吐出するというトラブルがある。修理するにはシリンダーヘッドの交換しかないようだ。

これは、このエンジンの構造上の問題に蝕が追い討ちをかけた可能性が疑われる。中にはエンジン防蝕亜鉛の存在さえ知らず交換したことがないというとんでもないオーナーもいるようなので、中古艇を買う際は十分気を付けた方が良い。





by mantenbosisan | 2020-05-20 17:54 | エンジン(トラブル) | Trackback | Comments(0)
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